『ネイティヴ・タン』
ポイズン
ポイズンの4枚目のスタジオアルバム『ネイティヴ・タン(Native Tongue)』(1993年)は、バンドにとって大きな転換期を象徴する作品です。前作『フレッシュ・アンド・ブラッド』の成功後、ポイズンはグラムメタルの象徴的なバンドとして認知されていましたが、音楽シーンが変化し、グランジやオルタナティブ・ロックが台頭してくる中で、ポイズンもまた進化を余儀なくされました。さらに、ギタリストのCC・デヴィルが脱退し、新たにリッチー・コッツェンが加入したことで、バンドのサウンドはこれまでとは一線を画するものとなっています。
『ネイティヴ・タン』は、それまでのポイズン作品と比べて、より成熟した音楽性と深みのあるテーマが特徴です。アルバム全体を通して、これまでの派手でキャッチーなグラムメタルの要素が抑えられ、代わりにブルースロックやファンクの影響を強く感じさせる楽曲が多く含まれています。リッチー・コッツェンのギタープレイが、テクニカルでありながら感情豊かで、バンドのサウンドに新たな彩りを加えています。
アルバムのオープニングを飾る「Native Tongue」は、力強いギターリフと、どこかトライバルなリズムが特徴的な曲です。この曲から、アルバム全体にわたって展開される音楽的な多様性が感じられ、リスナーを新しいポイズンの世界に引き込みます。歌詞は、バンドのこれまでのパーティーロックのイメージとは異なり、よりシリアスでメッセージ性のある内容が含まれています。
「Stand」はアルバムの中でも最も注目される楽曲の一つで、シングルとしてリリースされました。アコースティックギターとゴスペル風のバックボーカルが印象的なこの楽曲は、自己肯定や人間の強さをテーマにした歌詞が感動的です。この曲では、ブレット・マイケルズの歌唱が特に際立ち、感情を込めたパフォーマンスがリスナーに響きます。ポイズンのバラードといえば「Every Rose Has Its Thorn」が有名ですが、「Stand」はそれに匹敵するほどの強いメッセージ性を持った曲と言えるでしょう。
また、「Until You Suffer Some (Fire and Ice)」もアルバムのハイライトです。スローテンポで、ブルースの影響を強く感じさせるこの曲は、リッチー・コッツェンのギタープレイが冴え渡る一曲です。彼のテクニカルなギターソロと、楽曲全体に漂う哀愁が、バンドの新たな音楽的な方向性を強く感じさせます。ポイズンの従来のファンにとっては驚きかもしれませんが、この曲はバンドの進化を象徴しています。
「The Scream」や「Ride Child Ride」などのトラックでは、ファンクやソウルの要素が取り入れられ、これまでのポイズンの音楽に新しい風を吹き込んでいます。リッチー・コッツェンの影響が強く感じられるこれらの曲は、リズムセクションがタイトで、ギターリフが複雑であることが特徴です。これらの要素は、これまでのシンプルでキャッチーなグラムメタルとは異なるアプローチで、バンドの音楽的な多様性を示しています。
また、アルバムの中盤には「Body Talk」のようなセクシーでグルーヴ感のある楽曲もあり、ポイズンの遊び心を残しつつも、リッチー・コッツェンのブルースやファンクの要素が際立っています。このような楽曲は、ポイズンの新たな音楽的方向性を探る実験的な試みであり、バンドの柔軟性を示しています。
全体として、『ネイティヴ・タン』は従来のポイズンのファンにとっては賛否両論のアルバムとなったかもしれませんが、その音楽的な野心と進化を示す重要な作品です。派手でキャッチーなグラムメタルのサウンドが特徴的だった初期のアルバムとは異なり、この作品ではより深みのある音楽性とメッセージが前面に押し出されています。特にリッチー・コッツェンの加入によって、ギタープレイの質が格段に上がり、バンドに新たなエネルギーをもたらしました。
『ネイティヴ・タン』は、ポイズンが単なるパーティーバンド以上の存在であることを証明するアルバムであり、90年代の音楽シーンに適応しようとする彼らの姿勢が強く感じられます。このアルバムは、彼らのキャリアの中で異色の作品として位置付けられますが、その音楽的な挑戦と進化は、今でも評価されています。
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