【アルバム紹介】『ディトネイター』(『Detonator』)

『ディトネイター』
ラット

ラットの1990年リリースの5枚目のスタジオアルバム『ディトネイター (Detonator)』は、バンドがこれまでのサウンドを維持しつつも、より洗練されたプロダクションと成熟したソングライティングを追求した作品です。グラムメタルの黄金時代が終わりを迎えつつあったこの時期に、ラットは商業的な成功と音楽的な進化のバランスを取ろうと試み、より幅広いリスナーにアピールしようとしました。

アルバムのオープニングトラック「Intro to Shame」から続く「Shame Shame Shame」は、重厚なギターリフとキャッチーなコーラスが印象的な楽曲です。この曲はシングルとしてもリリースされ、MTVでヘビーローテーションされたことで、ラットの存在感を再確認させました。ギタリストのウォーレン・デ・マルティーニとロビン・クロスビーの息の合ったギターワークが光り、パワフルでエッジの効いたサウンドが特徴です。

「Lovin’ You’s a Dirty Job」もシングルカットされ、グルーヴィーなリズムと鋭いギターリフが融合したハードロックナンバーです。この曲は、バンドの持つキャッチーさと攻撃性を見事に表現しており、アルバム全体の中でも特に印象的な楽曲です。デ・マルティーニのギターソロは、彼の技巧的なプレイスタイルが冴え渡り、ラットのサウンドに深みを加えています。

『ディトネイター』では、プロデューサーとして有名なデズモンド・チャイルドが関わっており、彼の影響はアルバム全体にわたって感じられます。チャイルドの手腕により、楽曲の構成やメロディがより洗練され、ラットのサウンドに新たなポップセンスが加わっています。「Heads I Win, Tails You Lose」や「Can’t Wait on Love」などの楽曲では、チャイルドの影響が強く、よりラジオフレンドリーな要素が感じられます。これにより、ラットは彼らの従来のファンベースだけでなく、より広範なオーディエンスにもアピールすることができました。

「Givin’ Yourself Away」は、アルバムの中で異彩を放つバラードで、デズモンド・チャイルドとラットの共作によるものです。スティーヴン・パーシーのボーカルが感情豊かに響き、デ・マルティーニのメロディアスなギターが楽曲を引き立てています。このバラードは、バンドが感情的な深みを探求する姿を示し、ハードロックバンドとしての一面に新たな魅力を加えています。

アルバム全体を通して、ラットはよりクリーンでプロフェッショナルなサウンドを追求しており、楽曲のクオリティも高い水準を保っています。しかし、一部のファンからは、プロダクションがあまりにも洗練されすぎており、初期の荒々しさやストリート感が失われたと感じられることもありました。特に、アルバムの音楽的な方向性がグラムメタルの典型的なスタイルからやや離れ、よりメインストリームを意識したものとなっている点は議論の的となりました。

『ディトネイター』は、ラットが音楽的に成長し、キャリアの中で新しい段階に進んだことを示す作品です。特にウォーレン・デ・マルティーニのギターワークは、このアルバムでも際立っており、彼の技巧とセンスはバンドのサウンドを支え続けています。また、ロビン・クロスビーとのギターデュオも引き続き健在で、楽曲に力強さと奥行きを与えています。

全体として、『ディトネイター』は、ラットのこれまでのアルバムに比べてよりポリッシュされたサウンドと成熟したソングライティングが特徴の作品です。プロデューサーのデズモンド・チャイルドの関与により、メロディのキャッチーさが増し、より広いリスナー層にアピールできるアルバムに仕上がっていますが、その反面、初期の荒々しさやエッジが薄まっているという声もあります。それでもなお、このアルバムはラットが80年代末から90年代にかけて進化し続ける姿を象徴しており、彼らの音楽的なキャリアの中で重要な作品として位置づけられます。

『ディトネイター』は、時代の移り変わりに対応しつつも、ラットらしいハードロックの精神を保ち続けたアルバムであり、バンドのファンや80年代のロックファンにとって、今でも楽しめる内容となっています。

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