『セインツ・オブ・ロスアンゼルス』
モトリー・クルー
モトリー・クルーの2008年リリースのアルバム『セインツ・オブ・ロスアンゼルス (Saints of Los Angeles)』は、1989年の大ヒット作『ドクター・フィールグッド』以来となるオリジナルメンバー全員が揃った作品です。このアルバムは、バンドの半自伝的な本『The Dirt』にインスパイアされ、彼らのキャリアとロサンゼルスのハードロックシーンの物語をテーマにしています。80年代のグラムメタル時代のサウンドを現代的にアップデートしながらも、彼らのアイデンティティをしっかりと感じさせる作品となっています。
『セインツ・オブ・ロスアンゼルス』のサウンドは、モトリー・クルーが80年代に築き上げた特徴的なグラムメタルの攻撃的でエネルギッシュなスタイルを彷彿とさせる一方で、モダンなプロダクションが施されています。ジョン・フィヴ(元マリリン・マンソン、ロブ・ゾンビ)の共同作曲やプロデューサー、ジェームズ・マイケルの手腕もあって、アルバムは一貫してタイトでヘヴィな仕上がりになっています。ギターリフは鋭く、トミー・リーのパワフルなドラム、ニッキー・シックスの力強いベースライン、そしてヴィンス・ニールの特徴的なボーカルが一体となって、バンドのサウンドが再び輝きを放っています。
アルバムのタイトル曲「Saints of Los Angeles」は、アルバムの象徴とも言える楽曲で、ロサンゼルスの音楽シーンとバンドの荒々しい成功を物語っています。この曲は、キャッチーなコーラスと激しいギターリフが印象的で、モトリー・クルーの古き良き時代を思い起こさせる一方で、現代的なエッジも加わっています。特に、ライブでの盛り上がりを意識したアンセム的な楽曲で、バンドの復活を強く印象付ける一曲です。
「Mother Fucker of the Year」は、モトリー・クルーらしい反骨精神あふれる楽曲で、攻撃的でありながらキャッチーなメロディが際立ちます。歌詞は自信に満ち溢れており、バンドのワイルドで無謀なイメージを強調しています。ヴィンス・ニールのボーカルは勢いがあり、ミック・マーズのギターリフは激しく、トミー・リーのドラミングもこの曲に大きな推進力を与えています。彼らの全盛期を思わせるような勢いが詰まった楽曲です。
「The Animal in Me」は、ややスローテンポでメロディックな曲調が特徴的なナンバーです。この楽曲は、アルバム全体のハードなトーンを和らげ、バンドの感情的な側面を垣間見ることができる一曲です。特に、コーラスの美しいハーモニーとムーディなギターラインが際立ち、バンドの音楽性の幅広さを感じさせます。
「This Ain’t a Love Song」では、タイトルが示す通り、モトリー・クルーらしい反恋愛的で挑戦的な歌詞が特徴です。この曲は、キャッチーなメロディとハードなサウンドのバランスが絶妙で、アルバム全体の流れの中で重要な役割を果たしています。
『セインツ・オブ・ロスアンゼルス』は、モトリー・クルーの初期のエネルギーを現代に甦らせたアルバムといえるでしょう。彼らのキャリアを振り返りながらも、バンドとしての進化を感じさせる内容になっており、特に古くからのファンにとってはノスタルジックでありながら新鮮な感覚を提供します。ミック・マーズのギターワークは年齢を感じさせない鋭さを持ち、ニッキー・シックスのベースラインはアルバム全体に力強さを与え、トミー・リーのドラムは相変わらずの圧倒的な存在感を放っています。
批評家からの評価は、全体的に好意的で、特にバンドが再びオリジナルメンバーで制作を行ったことが称賛されました。彼らの過去のスタイルに忠実でありながらも、現代のハードロックの要素を取り入れたサウンドは、新しい世代のリスナーにもアピールしました。しかし、一部の批評家は、このアルバムがあまりにも過去のサウンドに依存していると感じ、新しい挑戦が不足していると指摘しました。それでも、バンドの根強いファン層にとっては、このアルバムは待ち望んでいたモトリー・クルーの復活を象徴する重要な作品です。
総評として、『セインツ・オブ・ロスアンゼルス』は、モトリー・クルーが彼らのルーツを再確認し、80年代のグラムメタルの栄光を現代に甦らせたアルバムです。エネルギッシュでキャッチーな楽曲が詰まっており、オリジナルメンバーが揃ったことで、バンドとしての一体感と自信が感じられる作品に仕上がっています。モトリー・クルーのファンにとって、このアルバムは必聴の一枚であり、彼らの伝説がまだ終わっていないことを証明しています。
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