【アルバム紹介】『7800°ファーレンハイト』(『7800° Fahrenheit』)

『7800°ファーレンハイト』
ボン・ジョヴィ

ボン・ジョヴィの2作目のアルバム『7800°ファーレンハイト』(7800° Fahrenheit、1985年)は、バンドが次のステップへ進むための重要な過渡期を捉えた作品です。このアルバムは、デビュー作『夜明けのランナウェイ』の成功を受けて制作されたもので、より成熟したサウンドと、バンドのロックの方向性を明確にする試みが感じられますが、その一方で完全にバンドのアイデンティティが固まっていない印象もあります。

『7800°ファーレンハイト』というタイトルは、ロックの情熱を象徴するような「高温」を意味し、アルバム全体に力強いエネルギーが満ちています。アルバムの代表曲である「In and Out of Love」は、アップテンポなロックナンバーで、リッチー・サンボラ(Richie Sambora)の印象的なギターワークとジョン・ボン・ジョヴィ(Jon Bon Jovi)のキャッチーなボーカルが際立つ一曲です。この曲は、バンドのライブで定番となり、ファンの間で人気のある楽曲となりました。

もう一つのシングル「Only Lonely」は、より感情的でメロディアスな楽曲で、80年代ロックらしいバラード調の曲です。この曲は、ジョン・ボン・ジョヴィの情熱的なボーカルと、サンボラのギターが感動的なハーモニーを生み出しており、彼らのバラードの作曲能力が垣間見えます。このタイプの楽曲は、後にボン・ジョヴィがバラードで大成功を収める布石ともいえるもので、ファンからも評価の高い曲です。

アルバム全体として、エネルギッシュなロックナンバーと感情豊かなバラードのバランスが取れているものの、後にリリースされる『Slippery When Wet』(1986年)や『New Jersey』(1988年)と比べると、ややまとまりに欠ける部分があるとも言えます。『7800°ファーレンハイト』では、バンドがまだ完全に自分たちのサウンドを見つけきれていないような試行錯誤が感じられます。アルバムのトーンも、ハードロックとポップスの間で揺れ動いており、その結果、特定の曲が際立ちきれていない印象が残ります。

ただし、アルバムのプロダクションは80年代らしい煌びやかさを備えており、キーボードやシンセサイザーの使用が時代を反映した音作りをしています。デヴィッド・ブライアン(David Bryan)のキーボードは、特に「Silent Night」などで大きな役割を果たし、バンドの音楽にメロディックな要素を加えています。

商業的には、『7800°ファーレンハイト』はそれなりの成功を収めましたが、ボン・ジョヴィが国際的なスターになるのは、この次にリリースされた『Slippery When Wet』での大ブレイクを待つことになります。アルバムの評価も、後続の作品に比べると控えめである一方、コアなファンにとっては重要な過渡期の作品として愛されており、バンドの成長過程を示す貴重な一枚です。

総じて、『7800°ファーレンハイト』は、ボン・ジョヴィのエネルギーとポテンシャルを示しながらも、まだ完全にスタイルを確立できていない時期のアルバムです。それでも、この作品を通じてバンドは確実に次のステージへと進んでおり、後の爆発的な成功を予感させる内容となっています。

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