『インフェステイション』
ラット
ラットの2010年リリースのアルバム『インフェステイション (Infestation)』は、バンドのルーツに立ち返った作品として、多くのファンや批評家から高く評価されました。これは、1999年のセルフタイトルアルバム以来、11年ぶりとなる新作であり、彼らの初期のエネルギーやサウンドを再び蘇らせることに成功しています。特に1980年代のグラムメタル、ハードロックの要素を強調し、ファンにとっては待望の”クラシック・ラット”の復活といえる作品です。
アルバム全体を通して感じられるのは、初期のラットを思わせるダイナミックなギターワークとキャッチーなメロディライン。ウォーレン・デ・マルティーニのギターは、80年代に見られたあの独特のエッジを持ち続けており、新メンバーであるカルロス・カヴァーゾ(元クワイエット・ライオット)の加入がサウンドに新鮮さを加えています。この二人のギタリストによるリフとソロの掛け合いは、アルバムの核となっており、往年のラットの魅力を思い出させます。
オープニングトラック「Eat Me Up Alive」は、パワフルなギターリフと共に始まり、アルバムの雰囲気を一気に盛り上げます。荒々しいエネルギーが全開で、スティーヴン・パーシーの特徴的なボーカルが楽曲にさらにアグレッシブさを加えています。この曲は、ラットが単に80年代の栄光を追うのではなく、現代のハードロックシーンにも適応していることを示しており、彼らの復活にふさわしいインパクトを与えます。
続く「Best of Me」は、キャッチーなメロディと分厚いギターサウンドが融合した典型的なラットの楽曲です。この曲はシングルとしてもリリースされ、メロディの親しみやすさとパワフルな演奏が絶妙に絡み合っています。コーラスのフックが強く、ラジオフレンドリーな一方で、ラットらしい荒々しさを失わずに保っています。
「A Little Too Much」や「Take a Big Bite」など、アルバム全体にはキャッチーでスリリングな楽曲が並び、テンポ感のあるギタープレイとエネルギッシュなリズムセクションがアルバムを通じて持続しています。「A Little Too Much」では、デ・マルティーニのリードギターが特に際立ち、曲全体に洗練された技術が光ります。一方、「Look Out Below」では、ヘヴィでダークなサウンドが展開され、ラットのより攻撃的な側面が強調されています。
『インフェステイション』が特に優れている点は、単なる懐古的な作品に終わらず、現代的なサウンドの中にもバンドのルーツをしっかりと感じさせるところです。楽曲のプロダクションはクリアでありながら、80年代の粗削りな質感も保ち続けており、新旧のファンを満足させる絶妙なバランスを取っています。プロデューサーのマイケル・バスケットの貢献も大きく、バンドの強みを最大限に引き出しています。
とはいえ、アルバムには少し単調に感じる部分もあり、数曲は似たようなパターンに頼りすぎているとの指摘もあります。しかし、それでもなお、アルバム全体を通してラットの真髄が感じられ、彼らが時代の影響を受けつつも自身の音楽的アイデンティティを保ち続けていることが伝わってきます。
『インフェステイション』は、バンドが自らのルーツに立ち返り、全盛期のエネルギーを取り戻した一作です。特に、ギターサウンドが大きくフィーチャーされ、ウォーレン・デ・マルティーニとカルロス・カヴァーゾのギターデュオがアルバムを大いに盛り上げています。スティーヴン・パーシーのヴォーカルも、彼の持つ独特の声質が楽曲にマッチしており、長いブランクを感じさせないパフォーマンスを見せています。
総じて、『インフェステイション』は、ラットの再起を祝うにふさわしいアルバムです。80年代のラットを愛するファンにとっては懐かしさとともに新たな活力を感じさせ、一方で90年代以降の音楽シーンを知らない新しいリスナーにも十分に訴求する力を持っています。時代を超えて愛されるハードロックの魅力を再確認させる、ラットのキャリアにおける重要な一枚と言えるでしょう。
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