【アルバム紹介】『ラット』(『Ratt』)

『ラット』
ラット

ラットの1999年リリースのセルフタイトルアルバム『Ratt』は、バンドにとって新たなスタートを切る重要な作品です。1980年代のグラムメタルシーンで成功を収めた彼らが、90年代末に再結成してリリースしたこのアルバムは、時代の変化に対応しながらも、ラットらしいエネルギーとサウンドを維持しようとした意欲的な試みです。

このアルバムは、彼らの黄金期の作品とは異なり、グランジやオルタナティブ・ロックが支配的だった90年代の影響を受けていますが、それでもラットの持つ独特のハードロックとメロディアスなサウンドは健在です。特にギタリストのウォーレン・デ・マルティーニのプレイは、このアルバムでも際立っており、彼のギターワークがアルバムの中核を支えています。

オープニングトラック「Over the Edge」は、重厚でグルーヴィーなギターリフが印象的な楽曲です。90年代らしいダークなムードが漂い、ラットが過去のキャッチーなグラムメタルスタイルとは異なる方向性を追求していることがすぐにわかります。スティーヴン・パーシーのヴォーカルも、以前よりもやや低く、落ち着いたトーンで歌われており、アルバム全体にシリアスで成熟した雰囲気を与えています。

「Luv Sick」や「Dead Reckoning」は、ラットらしいキャッチーなメロディがありながらも、よりモダンなプロダクションとヘヴィなリズムが強調された楽曲です。特に「Luv Sick」では、デ・マルティーニのソロが曲を引き締め、バンドの往年のファンにも響く要素を残しています。これらの楽曲は、90年代の音楽シーンに対応しつつも、ラットのアイデンティティを保とうとする努力が感じられるものです。

しかし、アルバム全体としては一貫性に欠ける部分もあり、時折方向性が定まらない印象を受けることがあります。「Live for Today」や「It Ain’t Easy」などの楽曲は、バンドの持つ本来のエネルギーがやや抑えられており、以前の作品と比べるとパンチに欠けるかもしれません。これらの曲は、バンドが新しいスタイルに挑戦する中で、まだ手探りの状態にあることを反映しているように感じられます。

とはいえ、「Breakout」や「So Good, So Fine」などの楽曲では、バンドが楽しんで演奏している姿がうかがえ、アルバム全体の中でも明るさと軽快さが際立っています。特に「So Good, So Fine」は、ラットらしいポップセンスが活きており、デ・マルティーニの軽快なギタープレイとパーシーのキャッチーなボーカルがうまく調和しています。

『Ratt』は、バンドが90年代という難しい時期においても進化を遂げようとする姿勢を示した作品です。1980年代のグラムメタルのスタイルからの脱却を試みつつ、90年代のロックシーンに合わせたサウンドを取り入れようとしており、その結果、アルバムには時代の変化に適応しようとするバンドの模索が反映されています。

総じて、『Ratt』はバンドにとってチャレンジングなアルバムですが、ウォーレン・デ・マルティーニのギターが光る楽曲や、スティーヴン・パーシーの成熟したボーカルが、依然としてファンを魅了します。方向性の揺れや一部の楽曲のインパクトの弱さは感じられるものの、バンドが新しいサウンドに挑戦し、過去の遺産に依存せずに進化を続けようとする姿勢が評価されるべき作品です。

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