『ロング・コールド・ウィンター』
シンデレラ
シンデレラのセカンドアルバム『ロング・コールド・ウィンター (Long Cold Winter)』は、1988年にリリースされ、彼らの音楽的な成熟と深まりを象徴する作品です。デビューアルバム『ナイト・ソングス』がグラムメタルの典型的なスタイルでシーンに登場したのに対し、このアルバムではよりブルースロックやクラシックロックの影響が色濃く現れ、シンデレラが単なるグラムメタルバンドにとどまらない音楽性を持っていることを証明しました。
オープニングトラック「Bad Seamstress Blues / Fallin’ Apart at the Seams」は、スライドギターによるブルースのイントロが印象的で、アルバムの全体的なブルージーなトーンを即座に提示しています。この曲は、トム・キーファーのソウルフルでハスキーなボーカルが光り、彼のギターワークとブルースへの情熱が強く感じられる楽曲です。続く「Gypsy Road」もまた、クラシックロック的なエネルギーに満ちており、キャッチーなメロディと力強いリフが特徴的です。この曲はシングルとしても成功を収め、バンドの代表曲の一つとなりました。
『ロング・コールド・ウィンター』のハイライトの一つは、バラード「Don’t Know What You Got (Till It’s Gone)」です。この曲は、シンデレラがただのハードロックバンドではなく、感情を深く表現できるバンドであることを証明する名バラードです。ピアノとアコースティックギターを用いた繊細なイントロから始まり、キーファーの感情豊かなボーカルが楽曲全体を支配します。歌詞のテーマは後悔と喪失で、力強いコーラスとエモーショナルなギターソロが曲を壮大に仕上げています。この曲は、シンデレラにとって最大のヒットとなり、彼らの音楽の多様性を広く認識させるきっかけとなりました。
タイトルトラック「Long Cold Winter」では、バンドのブルースロックの影響が最も強く現れており、スローで深みのあるギターリフと、ソウルフルな歌唱が融合した一曲です。この楽曲は、レッド・ツェッペリンやローリング・ストーンズなど、70年代のブルースロックバンドからの影響を感じさせます。シンプルながらも重厚なサウンドと、キーファーの感情表現豊かなボーカルが、この曲をアルバムの中でも特に印象深いものにしています。
他にも、「The Last Mile」はアップテンポでありながらもブルージーなリフが特徴の楽曲で、シンデレラが持つハードロックとブルースの両面を巧みに融合させています。「Coming Home」はまた、メロディアスなバラードで、ツアー中の孤独感や家に帰りたいという気持ちが歌われており、バンドのライフスタイルが反映された内容です。シングルとしてリリースされ、こちらもヒット曲となりました。
アルバム全体を通して、プロダクションも秀逸で、特にギターサウンドが際立っています。プロデューサーのアンディ・ジョンズ(レッド・ツェッペリンやローリング・ストーンズを手がけた)が手掛けたこともあり、70年代のクラシックロックを彷彿とさせるウォームでダイナミックな音作りが特徴です。特にトム・キーファーのギタープレイは、テクニックだけでなく、感情表現の豊かさが際立っており、アルバム全体に重厚感をもたらしています。
『ロング・コールド・ウィンター』は、シンデレラがグラムメタルの枠を超え、ブルースロックの要素を取り入れた成熟したアルバムです。この作品によって、彼らは商業的な成功だけでなく、音楽的な評価も高めました。デビュー作のエネルギーを維持しながら、より深い音楽的探求を示したこのアルバムは、彼らのキャリアの中で特に重要な位置を占めています。
総評として、『ロング・コールド・ウィンター』は、シンデレラが自分たちの音楽性を広げ、ブルースロックとハードロックの見事な融合を果たした傑作です。感情的なバラードから、力強いハードロックナンバーまで、多彩な楽曲が詰まったこのアルバムは、80年代のハードロックシーンにおいても特に際立つ作品の一つといえます。
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