【アルバム紹介】『レトロ・アクティヴ』(『Retro Active』)

『レトロ・アクティヴ』
デフ・レパード

デフ・レパードの1993年リリースのアルバム『レトロ・アクティヴ(Retro Active)』は、バンドにとって特異な作品であり、過去の未発表曲やB面曲を集めたコンピレーションアルバムです。しかし、このアルバムは単なる寄せ集めに留まらず、デフ・レパードが新たなスタジオワークを加え、再編集・再録音したことで、バンドの幅広い音楽的な側面を示す重要な作品となっています。

『レトロ・アクティヴ』は、バンドのファンにとって過去の貴重な楽曲を再発見する機会となりました。これらの楽曲は、主にアルバム『ヒステリア』や『アドレナライズ』の制作過程で生まれたものですが、当時は収録されることなく日の目を見なかった作品が多く含まれています。バンドはこれらの未発表曲に対して新たな手を加え、サウンドを現代的に再構築しています。

アルバムの中でも特に注目されるのが、「Two Steps Behind」です。このアコースティックバラードは、アルバムのシングルとして大きな成功を収め、デフ・レパードの柔らかく感情豊かな一面を示す代表曲となりました。シンプルなアコースティックギターとジョー・エリオットの情感豊かなボーカルが特徴で、映画『ラスト・アクション・ヒーロー』のサウンドトラックにも収録され、広く知られるようになりました。ロックのエネルギーだけでなく、バンドの繊細なメロディメーカーとしての才能を証明する楽曲です。

続いて「Miss You in a Heartbeat」も、バラードの美しい代表曲で、フィル・コリンが作曲したこの曲は、ピアノを中心としたアレンジが印象的です。情感溢れるメロディと、ジョー・エリオットのエモーショナルな歌唱が、デフ・レパードのバラード作りの巧みさを再確認させます。アコースティック版とエレクトリック版が存在し、両方のバージョンが収録されていることで、楽曲の多様な解釈が楽しめます。

また、「Ride Into the Sun」は、デフ・レパードの初期のエネルギッシュなサウンドを感じさせる楽曲で、彼らの若々しいパンク的なエッジを持った一面が強調されています。1979年に録音されたこの曲は、彼らのデビュー期の荒削りなエネルギーを見事に再現していますが、今回のリリースで新たな命を吹き込まれました。

「Desert Song」は、スティーヴ・クラークのギターワークが際立つ楽曲で、彼の力強く感情的な演奏がこのアルバムの中でも特に目立っています。この曲は彼の死後に発表されましたが、彼の独特なギタースタイルと、デフ・レパードのサウンドの核となるダイナミズムを垣間見ることができます。

『レトロ・アクティヴ』は、デフ・レパードが単にハードロックバンドとしての顔だけでなく、多様な音楽性を持つことを示したアルバムでもあります。アコースティックバラードからハードなロックナンバーまで、幅広いスタイルの楽曲が収められており、バンドの音楽的成長や変遷を反映しています。特に、バラード曲が多く収録されているため、バンドのメロディアスな側面を楽しみたいリスナーには特におすすめです。

商業的には、前作『アドレナライズ』ほどの成功には至りませんでしたが、アルバムは批評家から肯定的に評価され、特に未発表曲やB面曲を単なる補遺として扱わず、再構築することで新たな価値を与えた点が高く評価されました。特に、「Two Steps Behind」や「Miss You in a Heartbeat」の成功は、バンドがバラード作りでも確固たる実力を持っていることを示しています。

総評として、『レトロ・アクティヴ』は、デフ・レパードの多面的な音楽性を堪能できる作品です。未発表曲やB面曲のコンピレーションながら、その緻密なアレンジと再構築されたサウンドによって、単なる過去の遺産にとどまらず、新しい魅力を持ったアルバムに仕上がっています。ファンにとっては必聴の一枚であり、デフ・レパードの音楽的進化と多様性を再確認できる重要な作品です。

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