【アルバム紹介】『ヒステリア』(『Hysteria』)

『ヒステリア』
デフ・レパード

デフ・レパードの1987年リリースのアルバム『ヒステリア(Hysteria)』は、バンドのキャリアにおいて最も重要かつ象徴的な作品であり、1980年代のロックシーンを代表する名盤の一つです。このアルバムは、バンドが音楽的にも商業的にも絶頂期を迎え、ハードロックとポップの完璧な融合を達成した傑作として広く評価されています。

『ヒステリア』の制作は、当時多くの困難に直面しました。バンドのドラマー、リック・アレンが1984年に交通事故で片腕を失ったという悲劇にもかかわらず、彼は専用の電子ドラムキットを使い、片腕での演奏に挑戦。バンド全体がその逆境を乗り越え、以前よりもさらに洗練されたサウンドを追求することになります。さらに、プロデューサーとして再びロバート・ジョン “マット” ラングが参加し、彼の完璧主義的なプロダクション手法により、アルバムは4年という長い制作期間を経て完成しました。

このアルバムの特徴は、極めて緻密なスタジオ技術による多重録音と、洗練されたポップセンス、そしてアリーナロックのエネルギーが融合したサウンドです。ギターのリフやドラムのビートがパワフルでありながら、ボーカルの多重ハーモニーやシンセサイザーの使用が、メロディにポップの魅力を持たせています。

代表曲「Pour Some Sugar on Me」は、アルバムを象徴する最大のヒット曲で、キャッチーなコーラスとリズミカルなギターリフが特徴です。この曲は、1980年代を代表するアリーナロックアンセムとして世界中で愛され、ロックファンのみならず広範なリスナー層に訴求しました。

続く「Animal」は、ポップ寄りのメロディが際立つ楽曲で、デフ・レパードがいかにしてハードロックとポップミュージックを融合させたかを象徴する曲です。ジョー・エリオットのボーカルが温かく、エモーショナルに響き、シングルカットされたこの曲は、アルバムの多彩な魅力を象徴しています。

「Hysteria」は、アルバムのタイトル曲であり、ゆったりとしたテンポの中に繊細さと感情が詰まったバラード的なナンバーです。ギターリフとシンセサウンドの美しい絡み合いが印象的で、壮大なスケール感が感じられます。この曲は、アルバム全体に漂うロマンチックで幻想的な雰囲気を象徴しています。

他にも、ハードロックのエッジを効かせた「Rocket」や「Armageddon It」、そして力強いバラード「Love Bites」は、アルバムの幅広い音楽性を示しています。「Love Bites」はバンドにとって初の全米No.1シングルとなり、彼らのロマンチックな側面を強調する楽曲としても印象的です。

サウンドの特徴として、ギターリフとボーカルハーモニーが多層的に構築されており、スタジオでの緻密なプロダクションがアルバムの一つの象徴となっています。この結果、全体が非常にクリーンで広がりのある音像を持ち、当時のロックアルバムの中でも異彩を放つものとなりました。特にマット・ラングの完璧主義的なアプローチが、バンドの音楽を極限まで精緻に仕上げる一因となり、サウンドのディテールに至るまで徹底したクオリティが追求されています。

商業的成功も驚異的で、『ヒステリア』は全世界で2000万枚以上を売り上げ、バンド最大のヒット作となりました。アメリカのビルボードチャートで1位を獲得し、シングルも次々とヒットするなど、ロックバンドとしての絶対的な地位を確立しました。

総評として、『ヒステリア』は、デフ・レパードの音楽的野心が最も成功した形で具現化されたアルバムです。ハードロックのエネルギーと、ポップのキャッチーさを完璧に融合させたこの作品は、当時の音楽シーンを超えて今日に至るまで影響を与え続けています。リック・アレンの奇跡的な復活や、長い制作期間を経た緻密なプロダクションといった背景を考えると、このアルバムは単なる音楽作品以上の、デフ・レパードの不屈の精神と革新性を象徴する一枚と言えるでしょう。

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