『オン・スルー・ザ・ナイト』
デフ・レパード
デフ・レパードのデビューアルバム『オン・スルー・ザ・ナイト(On Through the Night)』は、1980年にリリースされ、彼らの将来の成功を予感させる重要な作品です。このアルバムは、NWOBHM(New Wave of British Heavy Metal)ムーブメントの中で登場し、当時の若いバンドがいかにしてハードロックとヘヴィメタルの要素を融合させ、さらにポップ感覚を取り入れるかを模索していたかを象徴しています。
アルバム全体には、デフ・レパードの初期の荒々しさとエネルギッシュなパフォーマンスが溢れており、後の洗練されたサウンドとは異なる、若さゆえの衝動と攻撃性が感じられます。リーダーであるジョー・エリオットの熱のこもったボーカル、スティーヴ・クラークとピート・ウィリスによるツインギターの厚みのあるサウンド、そしてリズムセクションのリック・サヴェージ(ベース)とリック・アレン(ドラムス)が生み出すパワフルなビートが印象的です。
オープニングトラック「Rock Brigade」は、ストレートなロックンロールナンバーで、シンプルなリフとエネルギッシュなコーラスが特徴です。これに続く「Hello America」では、バンドが当時まだ実現していなかったアメリカでの成功を夢見ていたことが伺え、そのキャッチーなメロディは後のポップ寄りな方向性を予感させます。
「Wasted」は、ヘヴィで力強いリフとリズムを持つアルバムのハイライトの一つで、ライブパフォーマンスでも人気のある曲です。この楽曲では、バンドがハードロックとメタルの要素を効果的に融合し、彼らのエネルギーを存分に表現しています。「Sorrow Is a Woman」や「It Could Be You」など、アルバム全体を通して、彼らの多様な音楽的アプローチが垣間見え、単なるハードロックバンドではなく、より幅広いサウンドを追求している姿が見られます。
また、「Overture」では、プログレッシブロック的な要素が加わり、バンドの楽曲構成やアレンジの野心が伺えます。後の商業的成功を支えたポップセンスはまだ未完成ではありますが、この時点で彼らの音楽的なビジョンが徐々に形を成していたことは明らかです。
ただし、アルバム全体としてはまだ成熟途上であり、サウンドや楽曲の構成に粗削りな部分も残っています。プロデュースを担当したトム・アロムの手腕により、バンドのエネルギッシュなパフォーマンスがうまく捉えられている一方で、後の作品ほどの洗練されたプロダクションや磨かれたメロディは見られません。それでも、デビュー作としては十分なインパクトを持っており、デフ・レパードがロックシーンでの成功を収める土台を築いた重要なアルバムです。
『オン・スルー・ザ・ナイト』は、後にリリースされる『ハイ&ドライ』や『パイロマニア』といった名作に比べると知名度は低いかもしれませんが、バンドのルーツと初期のパワーを知る上で欠かせない作品です。NWOBHMの中で、ポップセンスを取り入れたスタイルを確立しつつあった彼らが、その後のメガヒットへの道を切り開く過程を感じることができるアルバムと言えるでしょう。
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